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甲状腺の手術について

甲状腺の手術が必要といわれたが、どんな手術なんだろうと思われる方、又、
甲状腺の手術の後どのように回復していくのだろうと思われている方のためのページです。

甲状腺手術の方法を解説した後、手術後の注意点などをお話します。

このページでは、良性腫瘍悪性腫瘍の手術の一部を
写真を交え簡単に解説します。


まず甲状腺の手術の流れを御紹介します。

甲状腺の腫瘍の手術(良性・悪性)

手術に先立ち、頚の切開線を決めるため手術前に患者さんが座った状態で
鎖骨の上縁の線・これより上の頚を屈曲したときにできるしわの線を見つけ
マークしておきます。
切開をする部位に血管を収縮させる薬を注射しています。(1%Xylocaine+epinephrine)
消毒をしています。
滅菌したシーツをかけた後、皮膚切開し、皮膚及び皮下脂肪を弁状に剥離し、
シーツにこれを固定しています。
この症例では、左葉切除を施行していますから、甲状腺の真ん中を(isthmus)切離しています。
甲状腺の手術で大事なことは、甲状腺を切除する際、周囲の臓器特に神経と上皮小体の血行を温存することです。
写真では、右上下の上皮小体へ行く血流を温存するため、下甲状腺動脈の枝を温存しているところです。
糸がかかっているのは、下甲状腺動脈と上皮小体へ行く血管の枝です。
摘出が終了した後、傷を洗浄止血し、創を閉鎖します。
左側に見えている管は、ドレーンで、創に血液や浸出液が溜まらぬように廃液させるための管です。
摘出された甲状腺右葉の割面写真です。
いかなる摘出標本も、摘出後病理組織学的(顕微鏡的)検索がなされます。

このような手術をした場合、患者さんは、全身麻酔が完全に覚醒した後(ほとんどの症例で手術当日夜)から、飲水可能となります。
ドレーンは、翌朝抜去され朝から普通食を食べられます。通常、術後2日目からシャワーを使用することができます。
片側切除ですむ場合、入院期間は入院より約5日間くらいです。
全摘手術, リンパ節郭清の場合で、入院期間は7日間くらいです。


癌の手術の場合は、良性病変の手術と比較しますと、若干異なります。
甲状腺にできる癌は数種類存在しますが、日本人にできる癌は、ほとんどは分化型の癌といって治りやすいものです。
しかし、リンパ節に転移したり周囲臓器に浸潤したり、又時には、遠くの臓器へ転移していることもあります。
手術に関して良性疾患と異なるのは、転移している可能性の高いリンパ節をとることです。(郭清が加わります)
周囲臓器とりわけ上喉頭神経外枝・反回神経・上皮小体の温存に極力勤めます。浸潤を認める場合は、これらを切除します。
左写真は、患者右側の郭清を終えたところです。温存された反回神経・上皮正体を認めます。
切除された甲状腺標本です。良性疾患同様病理学的検索がなされます。
左写真は、全摘出術を施行した後の標本ですが、甲状腺右葉に癌があります。
この症例では、リンパ節の組織学的検索の結果、転移はありませんでした。
気管周囲のリンパ節のみ郭清してありますが、もし転移が多数認められれば、アイソトープ診断治療をすることとなるでしょう。
癌の手術をしても、その後の生活そのものは替わることの無いのがほとんどです。
癌の手術での危険性は皆無ではありませんが、熟練した甲状腺外科医が手術する限り、そのリスクは非常に小さいでしょう。

腫瘍の術後では、甲状腺が残してあれば、ホルモンを内服する必要がないことが多いのですが、内服が必要なこともあります。
術後検査をしてもらいこれを決定してもらうことが必要です。
全摘をした場合は、甲状腺ホルモンを内服するのは必須です。術後の検査をしながら、適切な量を決定してもらいましょう。

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