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バセドウ病の治療法には大きく分けて三つあります。薬物による治療・手術・放射線治療です。
ここでは手術療法のみについて解説いたします。
薬にアレルギーがあり内服できない人、甲状腺が大きくて美容上の見地から手術を望まれる人、
薬はちゃんと飲むけどかなか治らない人、バセドウ病の合併病変である眼症状がある人、
薬を飲むことをすぐ忘れ再発を繰り返す人、早く治ってしまいたい人など手術を受ける方の理由は様々です。
内分泌の病気に詳しい内科の先生方や甲状腺外科医によく御相談なさることが大切です。
バセドウ病の手術方法は、ここ数年でその考え方が変化しています。
バセドウ病の手術の理屈は、当初、甲状腺がホルモンを出しすぎるのですから、これを是正すべく、丁度よい量のホルモンを甲状腺が分泌するように、
甲状腺組織を丁度よい量残すことを目的として行われました。 しかし、このような手術を受けた方の経過を長年見ていますと、再発例があるのです。
そこで、現在は、手術をするからには、絶対再発の無いよう全部甲状腺を切除するか全摘に近い手術をするようになりました。
もちろんこのような手術をしますと、術後は甲状腺ホルモンが不足するかまったく くでないため、甲状腺ホルモンを内服せねばなりません。
しかし、1日1回甲状腺ホルモンを内服する方が、再発するよりよいというのが、甲状腺を手術する外科医の意見でしょう。(御批判的意見をお持ちの先生方は、メールをお願いいたします。)
手術
バセドウ病の患者さんですが、この方は大きな甲状腺腫であることから、手術を決心されました。 バセドウ病の手術をする際、甲状腺機能を正常にしてから手術を行うのが好ましいのですが、どうしても正常化しない方は、ステロイドホルモンを投与して手術を行います。 手術前に頚に切開線をつけておくことや切開部位に注射をするのは腫瘍の手術と同様です。 頚の白っぽくなっているところが、注射によって血管が収縮している領域です。出血が少なくなります。 全身麻酔下に手術が始まります。 |
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頚の皮膚を横に切った後、弁状に上下に剥離し、手術シーツに固定してあります。 甲状腺腫が大きく、膨隆しています。表面には前頚部の筋肉が見えています。 また、上下方向に走る血管も見えています。 |
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前頚部の筋肉を横に切開し剥離を完了すれば、甲状腺が見えてきます。 甲状腺という臓器は、2種類の甲状腺ホルモンを分泌していますが、もともと血流が大変多い臓器です。 バセドウ病という病態でさらに血流豊富となっています。 写真では、甲状腺表面の拡張した血管を見ることができます。 |
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中央に見えている円柱状のものは、気管です。 甲状腺は、蝶が羽を広げたような形でこの気管をまたいでいます。 このまたいでいる甲状腺の部分(峡部)を切断したところです。 糸が付いていますが、断端からの出血を抑えるため縫合してあります。 |
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甲状腺右葉上極の処理をしています。 上喉頭神経外枝を見ることができます。 |
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甲状腺右葉背側を少し残し、右葉を切除した後の写真です。 | |
残された右葉を持ち上げると、温存された反回神経、上下の上皮小体を見ることができます。 | |
両側の切除が完了しました。 両葉背側の組織が少し残っています。 |
この手術で手術時間2時間10分、出血量60gです。
手術翌日から、普通食摂取、2日目から入浴許可、術後5日目に退院しています。
手術の後は甲状腺ホルモンを1日1回内服することが必要です。
術後自分にあった甲状腺ホルモン量が決定されれば、3か月分の処方ができます。
バセドウ病に手術を受けたあとは、少なくとも半年から1年に1回ホルモンや手術部位のチェックを受けることをお勧めします。
決められたホルモンは、なるべく忘れないよう内服してください。通常、チラージンというホルモンをないふくすることになります。
このお薬は、体での代謝時間が長いため、1日や2日内服を忘れたとしても、すぐに低下症を引き起こすことはありません。
しかし、続けて2週間3週間と内服をしないと、必ず機能低下症を引き起こし、体がだるくむくんできます。忘れずに内服をするよう努力してください。
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